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【切り抜き面白半分】其の一
1972年から1980年までの間「面白半分」という雑誌があった。編集長が半年ごとに代わり、その時代に活躍していた作家人がそれぞれの独自の視点で編集していたものである。パラパラめくっただけでも、奇抜な企画、アヴァンギャルドな演出、訳のわからない解釈が、ビュンビュン脳に響いてくる。そんな面白半分の中から企画を切り抜きしていこうと思う。

《其の一 全冷中顚末記》
全冷中とは「全日本冷し中華愛好会」のことらしい。冷し中華は確かに美味い。冷し中華を嫌いという人にはあまり出会わない。かといって、超好き!という人も稀かもしれない。でも愛好会くらいなら人は集まるかもしれない。冷やし中華がそこそこ好きな人と4〜5人くらいで、駅から徒歩10分くらいの少しさびれた中華料理店に入って、手前のテーブルが空いてるってのに、カウンターで並んじゃったりして。とりあえずビールっしょ、と誰かが口火を切って、まあそうなると、ツマミだといって、ザーサイやらピータンやらチンジャオロースを頼んだりする。チンジャオロースはつまみじゃねぇだろ!って脇から突っ込んだりして、でもつまんでるんだからツマミじゃんって返しがあって、とりあえず瓶ビールが3本くらい空く。さて、そろそろ、という頃合いになると思いきや、やっぱり餃子が食べたくなって、餃子4人前頼んじゃう。そしてビールが進む。昭和の頃なら、あの時の原のバッティングはねぇよなぁ、掛布はここぞという時にダメなんだよなぁ、川口(和久)カッコいいわぁ、なんて会話が弾むんだろうが、令和の時代の中華料理屋では何の話で盛り上がるんだろう。メタバースの話か。ランディ・バースの話にはならないか。なってほしいが。とか言ってる間に、腹が膨れてきて、もう冷やし中華入んないよ、とか言ってたりするけど、まあまあ俺たち愛好会なんだから、一杯くらい食おうぜ、とか言って、何とか一皿頼んだりするうちにまた野球の話になって。愛好といえば愛甲猛だよなぁ、あの構えとバッティングセンスはシビれるね、なんて言いながら、もう既に誰かが会計済ませちゃって、次はどこ行くか、浦和あたりがいいねぇ、なんて言いながら店を出て、しばしの別れとなった。まあそんなような内容だと思う。
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